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八百比丘尼(やお・びくに)
はるか昔、人魚の肉を食べたために八百年生きたという伝説上の女性のこと。地域によっては「はっぴゃくびくに」や「おびくに」などとも呼ぶ。
若狭(現在の福井県)を中心として、日本各地にこの八百比丘尼の伝承は伝えられており、地方により細かな部分は異なるが大筋では以下の通りである。
とある庄屋の家で、浜で拾ったという人魚の肉が振舞われた。村人たちは人魚の肉を食べれば永遠の命と若さが手に入ることは知っていたが、やはり不気味な為こっそり話し合い、食べた振りをして懐に入れ、帰り道に捨ててしまった。だが一人だけ話を聞いていなかった者がおり、人魚の肉を自宅に持ち帰ってしまい、その者の娘は人魚の肉を食してしまう。それからというもの、娘は十代の若さを保ったまま何百年も生きたが、結婚しても必ず夫に先立たれてしまい、他の周囲の者が皆死んでいく中、自分だけが年を取らずに生きながらえていることに煩悶し、また村の人々から化け物のように疎まれていたこともあって、剃髪して尼となり諸国を巡り歩いて貧しい人々を助けたが、最後は世を儚んで洞窟にこもった。
他にも、海に打ち上げられた人魚を庚申様に供えていたところ、ある女性がその供えられていた人魚の肉を食べてしまったという話もあるが、人魚を食べてからの話の筋は大方同じである。
なお比丘尼とは女性出家者のことで、男性僧侶の比丘に対応している。八百比丘尼の他には、歌念仏をして勧進をする歌比丘尼や、地獄絵図などを持ち歩いて各地を唱導し、熊野のために勧進することを業とした熊野比丘尼などがいる。

八尾比沙子は堕辰子の肉を食したことで不老不死の呪いをかけられた一種の八百比丘尼である。
『SIREN』の世界でも八百比丘尼の伝承は全国各地に伝わっているようだが、それは八尾比沙子自身が全国を巡り歩いたため(もしくは時空を超えたため)なのか、それとも他にも不老不死の呪いを掛けられた者がいたためなのかは不明である。
関連八尾比沙子

八尾 比沙子(やお・ひさこ)
はるか昔、羽生蛇村に堕ちてきた堕辰子の肉を口にして永遠の命を得た女性であり、羽生蛇村にかかる永劫の呪いを作り出した張本人。呪われた血脈である神代家の先祖でもある。
1300年以上昔にひどい飢饉が襲い、人々は次々と餓えて死んでいった。そんな全滅寸前にまで追いやられた村にある日、天から異形のモノが堕ちてくる。その時身重であった比沙子は、これから生まれてくる子供と自分自身のために、村に残っていた2人の村人とともに、その異形のモノの生肉を食べてしまう。そしてその異形が断末魔をあげた時、一緒に血肉を口にしていた村人は息絶え、村と比沙子は永遠に呪われてしまう。
堕辰子の肉を口にした比沙子は堕辰子と血肉を分けた存在であり、いわば神の分身、同体である存在である。しかしそれと同時に比沙子には永遠の呪い(永遠の命)を受けた存在ともなっている。その永遠の呪いは、堕辰子の怒りに触れたことが原因なのではなく、常世の存在を下位の人間が口にするという行為自体が禁忌に値していたことが原因であり、言わば堕辰子よりもさらに上位の次元の存在が、比沙子とその子孫、および村全体に呪いをかけているのである。
「永遠に生きる」という呪いをかけられた比沙子はそれ以来、八尾が犯した罪を赦してもらい、かけられた呪いを解いてもらうために、そして自らの分身でもある堕辰子を復活させて楽園へ導いてもらうために、異形のモノ――堕辰子に自分の血肉(子孫)を分け与えることにすべてを捧げる。
だが、比沙子は1000年以上もの長い間生きていたため、自分自身が何者で、何のために子孫を堕辰子に捧げているのかも分からなくなっている。そうした最初の目的や、自分の正体すら忘れかけている状況こそが、比沙子にかけられた呪いの本質と言える。
また、長い間生きていた比沙子には数多くの人格が生じており、27年前に神代家のお手伝いをしていた澄子も比沙子の人格のひとつである。「慈愛に満ちた献身的な求導女」というのも比沙子の人格の一つであり、普段牧野たちが接してきた比沙子も、恭也が大字粗戸で出合った比沙子もこの「慈愛に満ちた求導女」の人格である。
だが、普段から眺めることの多い信者帳に書かれた「めざめよ」という文字を見た時から、儀式を遂行することだけを目的とした残酷な人格がうっすらと現れはじめる。それ以来さまざまな記憶と人格が現れては消え、支離滅裂な行動を取るようになっていたが、うつぼ舟に乗って御神体である堕辰子の首を届けにきた自分自身を見た時、自分自身が何者で、何をなすべきなのかを完全に思い出す。
それからの比沙子は儀式を遂行することだけのために行動し、やがて神代美耶子という"実"を手に入れ、儀式を行うことに成功する。しかし、恭也と永遠の契約をしていた美耶子の"実"は不完全なものであったために、堕辰子は不完全体として復活してしまう。
やがて陽の光を浴びて傷ついてしまい、水鏡を通っていんふぇるのに逃げ込んだ堕辰子を追って、比沙子もいんふぇるのへとたどり着く。傷ついた堕辰子を見て悲しみに暮れていた比沙子であったが、そんな彼女らのもとへ須田恭也が現れる。本来ならば常世であるいんふぇるのにはたどり着くことができない恭也が現れたことに狼狽する比沙子であったが、すぐに恭也が美耶子の"実"を不完全なものにした存在であることに思い至り、取るに足らなかったただの少年が「自分に対抗する脅威」になったことを知る。
神代の血を受け継いでいた直系が途絶えたことから(自業自得だが)、これ以上待つことができなくなった比沙子は自分自身の"実"を堕辰子に捧げ、堕辰子は完全体として復活する。なお、なぜ比沙子が最初から自分の"実"を堕辰子に捧げて呪いから解放してもらおうとしなかったのは、比沙子は呪いから解放されると同時に永遠の命を獲得しようと思っていたためであり、そのため比沙子は自分の子孫を堕辰子に捧げていたのである。
しかし完全体として復活した堕辰子も恭也の手によって倒され、白髪となった比沙子は、切られてしまった堕辰子の首を持って次元の奈落へと落ちていってしまう。次元の奈落に落ちていった比沙子は、祭壇とともに御神体が求められるすべての時代(ないし時空)に向かって御神体を届ける存在と化す。こうして本来ならば堕辰子の首がなくなり儀式を遂行することができなくなった時点で、羽生蛇村は永遠に解放されることなく物語は終焉を迎えるはずであったが、比沙子が時空を超えて首を届けに来るために、比沙子と羽生蛇村は永遠に儀式を行い罪をあがなわなければならない。こうした結果、羽生蛇村には終わりと始まりという概念自体が消えてしまい、羽生蛇村の出来事は永遠に閉じたものとなってしまう。比沙子自身が「虚母ろ主の輪」となったというのはそういうことである。
モデルと声を担当したのは南りさ子。
名前の元ネタは言うまでもなく八百比丘尼から。
関連堕辰子神代美耶子須田恭也求導女
虚母ろ主の輪澄子
南りさ子

八尾ファイヤー(やお・ふぁいやー)
八尾比沙子が、用済みとなった神代亜矢子の身を焼いた時に使った技。手のひらをかざした相手を炎で包み込む。
なぜ八尾がこんな技を使えるのかはいまだに謎。堕辰子の肉を食べたからというには少し突飛すぎた感がします。
関連八尾比沙子

「約束」(やくそく)
相手に対して、または互いにある物事の処置をあらかじめ取り決めること。また、その内容。基本的に約束は守らなければならない。
須田恭也は、夢の中で神代美耶子の「全部消して。この村も、あいつらも、全部…!」という言葉を聞き、それ以来恭也は「すべて終わらせる」ことを美耶子と交わした約束だと思い、行動する。その結果、堕辰子を倒して、屍人を全滅させることに成功する。
また恭也は、美耶子を村から連れ出すことも約束しており、そのため恭也は延々と美耶子を探し続ける。
関連須田恭也神代美耶子(当代)

焼け跡(やけ・あと)
竹内多聞が公園付近で発見した白衣を燃やした跡のこと。

関連白衣の燃えカス竹内多聞

耶辺集落(やべ・しゅうらく)
大字波羅宿にあった集落。川崎家、高谷家、中島家、吉村家の4つの家が建てられている。
関連大字波羅宿

闇鍋奉行忍法帖(やみなべ・ぶぎょう・にんぽう・ちょう)
美浜奈保子が1999年に出演したVシネマ。
元ネタはVシネマの『美女奉行』シリーズと『くの一忍法帖』シリーズを合わせたものか?
関連美浜奈保子

輸血(ゆけつ)
何らかの血液成分の不足を自己または他者の血液から補う治療法のこと。通常は他人の血液を調整した輸血製剤を点滴投与することをさすが、手術や化学療法などに際し、あらかじめ採血・保存しておいた自己の血液を輸血する自己血輸血を行うこともある。
輸血をする際には、供血者(ドナー)と受血者(レシピエント)の血液型が一致しているほか(ただしO型のRh(-)はすべての血液型に対して輸血可能)、供血者の血液と受血者の血液を混ぜ合わせ、抗原抗体反応が起きないことを確かめる検査(交差適合試験)において適合しなければならないなどの検査を行わなければならない。
輸血用血液の供給方法には、輸血の必要な患者のあったとき近親者や知人がその場で血液を提供するという枕元輸血や、血液を売る代わりに報酬を受け取る血液銀行、健康人が無償で血液を提供する献血の3つがあるが、枕元輸血は感染症をチェックできないことや血液型が一致する人物がいないことがあるため、現在はほとんど利用されていない。血液銀行は麻薬常習者など感染症のリスクの明らかに高い提供者も金目当てに参加するなど、危険性が高すぎる。そのため日本では日本赤十字社による献血と、外国から輸入された血液製剤によって輸血用血液をまかなっている。
輸血の歴史は17世紀から始まっているが、それは子羊の血液を輸血するというものであった。輸血を施された青年は最初こそ順調に回復したらしいが(かなり嘘臭いけど)、同じように子羊の血液を輸血しつづけていると、青年は当然のように死亡。それ以来、ヨーロッパでは全面的に輸血は禁止されるようになった。
輸血の研究がようやく進展するのは1900年にラントシュタイナーがABO式血液型を発見したことで、輸血の際に、型の合っていない血液を使用したために生じた重い副作用や死亡事故を減らすことができたことによる。それから1914年に抗凝固剤が発見されたことで、採取した血液の凝固を防ぐことで、輸血の研究は進展していった。そして安全性などの問題に直面しながらも、さまざまな発見によって輸血の研究は進められている。
だが、輸血に関して最近特に問題となっているのは、輸血用血液の不足である。若年層の献血が減少しているほか、少子高齢化がそれに拍車をかけており、また外国で発生した病気によって輸入による血液製剤が使用できなくなることが主な原因である。それを解決するために人工血液の研究が進められているが、まだ実用化には至っていない。

宮田司郎は、先代・神代美耶子の導きによってか、神代の血が混じっている須田恭也の血液を安野依子に輸血して、依子の屍人化を防ぎ、これによって依子も永遠の命を得ることになった。その際、宮田は恭也と依子の血液型の一致を調べるなどの行為を行ったのかは不明。
関連宮田司郎須田恭也安野依子神代の血

夢(ゆめ)
睡眠中に起こる体感現象の一種。見た者の将来に対する希望・願望を指すか、これから起き得る危機を知らせる信号とも言われており、そこから転じて希望や願望そのものをさすこともある。ここでは睡眠中の夢のことをさす。

1.第3日2:13:17において、須田恭也は夢の中で、美耶子と「すべてを消し去って終わらせる」約束を交わしている。
2.第2日15:33:08において、神代美耶子は、大昔に八尾比沙子たちが堕辰子の血肉を口にしている現場を、堕辰子の視点から眺めるという夢をみている。
3.初日4:00:04において、恩田理沙は一瞬脳裏に浮かんだ光景に対して「夢?」と呟いている。
関連須田恭也神代美耶子恩田理沙

百合(ゆり)
ユリ目ユリ科のうち主としてユリ属(リリウム属)の多年草の総称。ユリ属植物は、北半球の温帯を中心に亜熱帯から亜寒帯にまで分布し、現在約100種類ほどが知られており、代表的な種には、ヤマユリ、オニユリ、カノコユリ、ササユリ、テッポウユリ、オトメユリなどがある。
キリスト教においてはユリはしばしば純潔の象徴として用いられ、聖母マリアの象徴として描かれる。ユリ全般の花言葉も威厳・純潔・無垢である。
第2日19時において、八尾比沙子は祭壇上で眠る神代美耶子の傍らに百合の花を置いている。これは美耶子が誰にも汚されていない存在、つまり完全な実であることを表現しているのではないかと思われる。だが、その時すでに美耶子は恭也と永遠の契約を交わし、"実"としては不完全な存在となっていた。
関連神代美耶子永遠の契約

酔う(よう)
酒を飲んで、そのアルコール分が全身に回ることにより、精神・行動が通常と違ってくる状態のこと。また乗り物の揺れや雰囲気などによって気分が悪くなることを指し、さらには心を奪われてうっとりとすること。

1.石田徹雄は勤務中にもかかわらず酒を飲んで、酔っ払っていた。そのため現世の羽生蛇村に赤い水の成分が混ざりこんでいた儀式の夜、アルコールのせいで赤い水への耐性が低かった石田は誰よりも早く半屍人の兆候が表れ、初老の上司を射殺し、周囲を徘徊し始める。そこで須田恭也の姿を認めた石田は恭也をも射殺しようとしてしまう。
2.第2日16:03:07において、宮田がわけのわからないことを呟いていたことに対し、安野依子は「はあ? あの人、酔ってるの? わけわかんなーい」という感想をもらした。
関連石田徹雄宮田司郎安野依子

陽石(ようせき)
男性器の形をした自然石で、豊饒、多産の象徴として日本の各地で祀られている。道祖神的役割を果たすものも存在する。対して女性器のかたちをしたものは陰石と呼ぶ(陽石の近くに岩が重なって向こう側が見えるところがあるが、これが陰石かもしれない)。
蛭ノ塚の祠の近くには陽石があり、長年放置されていたため、一部が崩れ落ちていた。牧野はこの陽石のかけらを使って祠の鍵を叩いた。
関連牧野慶蛭ノ塚道祖神

吉川 菜美子(よしかわ・なみこ)
『羽生蛇村異聞』第一話の主人公である少女。1976年7月6日に合石岳で行方不明になった。
菜美子の母親は合石岳で謎の行方不明を遂げており、そのため菜美子は7月5日の夕方に合石岳の向こうに小さな光が飛んでいるのを見て、母親と何らかの関係があるのではないかと思い、翌日の放課後に合石岳へと足を運ぶ。しかし母親は見つからず、学校から借りていた『羽生蛇村民話集』を返さなければならないことを思い、帰ろうとした矢先に山犬とも見える"何か"に襲われる。必死に"何か"から逃げる菜美子であったが、その途中で足元がグラリと揺れ穴の中に転落してしまう。
暗い穴の中で必死に助けを求めながら、赤い水を飲みながら生きながらえる。その時点では儀式が失敗して村が異界に引きずり込まれいないにもかかわらず、菜美子が落ちた穴にすでに赤い水が染み出していたのは、羽生蛇村は現世と常世の狭間にある不安定な土地であるがゆえに、儀式の失敗に先立って、菜美子の落ちた穴の周辺に赤い水が出現していたためと考えられている。もしくはその穴が異界の一部であった可能性もある。
赤い水でなんとか生命を保っていた菜美子は、赤い水の影響で幻視能力を獲得し、「漆黒の髪に白い肌の、黒い着物の少女の姿」と「子供用の棺を掲げ、粛々と行われる葬儀の風景」などを幻視する(「着物の少女」は先代・神代美耶子で間違いないが、「葬儀の風景」は一体誰の葬儀なのか解釈が分かれる。神代家から脱出して表面的には現世から消えた先代・神代美耶子の葬儀という可能性もあるが、もともと生まれていないとされている者の葬儀をするかというと疑問である。ここは菜美子が「――中は空」と奇妙な確信を抱き喪失感を覚えたことから、死亡とみなされてしまった菜美子の葬儀であると考えるべきであろう)。
現実とも夢ともつかぬ光景を幻視しながら、赤い水により徐々に変容していく菜美子は、最終的に犬屍人へと化すことにより、穴の中から抜け出すことに成功する。そして村へ戻る途中の山道で、「赤いランドセルを背負った少女」に出会い、走っている少女を追いかける。しかし少女は地面がグラリと揺れた拍子に赤い靄の中に消え去ってしまう。ここで菜美子が出会った「赤いランドセルの少女」とは、かつて合石岳へ母親を探しに来ていた吉川菜美子自身であり、同時にかつて吉川菜美子が襲われた山犬に見えた"何か"とは犬屍人と化した吉川菜美子自身である。このようなことが起こってしまったのは、羽生蛇村が時空の歪んだ場所であるからで、ここでも時間的に閉じた始まりと終わりという区別のつかないループが起こっているのである。
犬屍人と化した菜美子は、穴へと落ちていった過去の自分を見た後、人間であった時に返せなかった『民話集』を返しに学校に向かった。その本を返しに行ったことが語られているものが、『異聞』第一話の最後にある「羽生蛇村小学校の七不思議―帰ってきた少女―」であるが、ここで菜美子の関節が逆に折れ曲がったのは、菜美子が赤い海に向かうことができずに現世へと戻ってきてしまった不完全な犬屍人だからであり、そのため異界とは理の異なる現世では、通常の犬屍人と違って関節が逆方向に曲がってしまったのである(なお、ここで菜美子が天上に張り付いているから菜美子が蜘蛛屍人であると思われることがあるが、菜美子は女性であるから蜘蛛屍人にはならない)。
学校の図書室で発見された菜美子は宮田医院へと隔離されたが、『異聞』第五話では少年時代の宮田司郎と対峙している。この時にメスを手にした宮田司郎に菜美子が何をされたのかは永遠の謎である。
ゲーム本編でも吉川菜美子と関連したものがいくつかあり、合石岳の東3号斜坑にあるランドセルや、同じく鉱山事務所地下にあったカモシカ絵日記帳などは菜美子のものである。
関連『羽生蛇村異聞』犬屍人合石岳羽生蛇村民話集
ランドセル図書カード羽生蛇トライアングル
カモシカ絵日記帳神代美耶子(先代)宮田司郎

吉村 克昭(よしむら・かつあき)
宮田司郎の本当の名前であり、吉村孝昭の弟。
一度は異界に巻き込まれるが、跡取りが必要とされている宮田家のもとへ、因果律に従って現世に舞い戻ってきている。それからは宮田家に引き取られ、宮田司郎として育てられた。
名前の元ネタは、タレントでファッション評論家であるピーコの本名の杉浦克昭から。
関連宮田司郎吉村孝昭

吉村 孝昭(よしむら・たかあき)
牧野慶の本当の名前であり、吉村克昭の兄。
一度は異界に巻き込まれるが、次代の求導師が必要とされている教会のもとへ、因果律に従って現世に舞い戻ってきている。それからは牧野怜治の養子・牧野慶として、求導師の跡継ぎとなるべく育てられた。
名前の元ネタは、タレントで映画評論家であるおすぎの本名の杉浦孝昭から。ちなみに、おすぎの方が弟であるから、この点で吉村兄弟とは逆である。
関連牧野慶吉村克昭

吉村 俊夫(よしむら・としお)
吉村孝昭・克昭兄弟の父親。
一度は異界に巻き込まれるが、跡取りを必要としていた牧野怜治と宮田涼子のもとへ双子を与えるために、因果律に従って双子とともに現世に引き戻されている。現世に引き戻されて間もなく死亡した。
関連吉村孝昭吉村克昭

吉村 郁子(よしむら・いくこ?)
吉村孝昭・克昭兄弟の母親。
一度は異界に巻き込まれるが、跡取りを必要としていた牧野怜治と宮田涼子のもとへ双子を与えるために、因果律に従って双子とともに現世に引き戻されている。現世に引き戻されて間もなく死亡した。
死ぬ間際には「凄く、凄く、すべすべしてて光ってるんです! 凄く、凄く、すべすべしてて……」という謎の言葉を残している。堕辰子のことと思われるが、なぜ彼女が堕辰子の形状を知っていたのかは謎である。
関連吉村孝昭吉村克昭

「黄泉の国」(よみ・の・くに)
日本神話で言う死の国。暗く、邪霊などが住み、黄泉平坂で現世(葦原中国)とは分けられている。ここの竈で煮炊きされた食べ物を一口でも食べると、現世には帰れないとされる(黄泉戸喫)。黄泉国(よもつくに)、黄泉(よみ、こうせん)とも呼ぶ。
黄泉(こうせん)はもともと漢語で地下の泉を意味していたが、それが転じて、地下の死者の世界の意味となった。後に、日本へこの言葉が伝わった時には、ヨミという日本人が考えていた死者の世界と結び付けて考えられるようになった。ヨミの語源については、山が他界の入り口であったことからヤマが訛ったものという説もあるが、闇(やみ)が由来であるとする見解が有力である。
ヨミは夜見(よみ)であるとして、鳥取県米子市夜見町あたりが黄泉の国であるとする見解もあり、その地域には夜見島(よみじま)という島が実在していたとする資料もある。

安野依子が赤い水を飲もうとしたところ、竹内多聞は「黄泉戸喫ぐらいは知っているだろう」と言って安野の行動を止めた。その言葉から安野は、自分のいる場所が黄泉の国であるということを知る。
関連黄泉戸喫安野依子竹内多聞

四方田 春夫(よもだ・はるお)
四方田春海の父親。
1975(昭和77)年3月3日の「三隅日報」朝刊によれば、県道333号で、春夫が運転していた車に落雷が直撃し炎上。一緒に乗っていた妻の秀美とともに死亡した。
関連四方田春海四方田秀美

四方田 春海(よもだ・はるみ)
羽生蛇村小学校折部分校に通う少女で、高遠玲子の教え子。2003年に羽生蛇村で起きた災害の唯一の生還者である。
春海は交通事故で両親を亡くしており、それ以来叔母夫婦のもとで暮らしていた。しかし両親を失った出来事は春海にショックと孤独感を与え、心を閉ざすこととなった。
さらに春海には生まれつきわずかばかりの幻視能力を備えており(羽生蛇村には神代家以外にも幻視能力を身につけた者がたまに生まれる)、生来の内向的な性格も手伝ってか、他の子供と違うことに疎外感を感じている。
こうした孤独に気づいた春海の担任である高遠は、普通の生徒よりも親身になって接しており、「星を見る会」も春海を気遣って開かれたものである。
しかし春海は、その「星を見る会」に高遠と校長の名越英治の3人で参加していたところを異変に襲われ、異界に取り込まれてしまう。意識を取り戻した後は、高遠とともに校舎へ逃げ込むが、そこで屍人に襲われてしまう。高遠の活躍によりなんとか学校を脱出した春海は、それからも高遠と行動をともにして異界を逃げ回っていた。そんな逃亡劇によって春海は高遠を信頼し、自分の秘密を語るほどになったが、その高遠は初日23:00に春海を助けるために屍人とともに爆死してしまう。それ以来ずっと、春海はたった一人で屍人の手から逃れることとなってしまう。一旦は田堀の廃屋内に隠れていた春海だったが、気がつくと半屍人化した前田一家が廃屋内に居座っていたため、前田一家の目を盗んでなんとか脱出する。しかしその際、半屍人化した高遠玲子が春海の前に現れるというつらい現実を目の当たりにする。
高遠の手からも逃れた春海は、逃げ回るうちに屍人ノ巣へ進入。壁の隙間などを利用しながら屍人の襲撃から逃れて、中央交差点に到着。そこでしばらく眠り込んでいた春海であったが、人の気配を感じて物陰に隠れる。ここで牧野と宮田が対峙するが、その時の会話を春海が聞いていたかは定かではない。
さらに屍人ノ巣の中を逃げ回っていた春海だったが、第3日23:00に頭脳屍人化した名越に襲われる。絶体絶命に陥った春海だったが、屍人と化しながらも身を挺して春海を助けようとした高遠によって危機を救われる。そこで緊張の糸がほぐれた春海はその場に倒れこむが、その時春海が呟いた「お母さん…」という言葉は、初日23:00に高遠が言った「お母さんになってあげる」という台詞に対応していると考えて良い。屍人になってまでも春海を助けた高遠の姿から母親を感じ取ったのであろう。
そして気絶していた春海は、神代美耶子に導かれた須田恭也の手によって、次元の狭間を通じて現世へと無事戻ることができたのである。
なお、春海は異変が起きる数日前に神代美耶子と出会っており、友達になっている。幻視という同じ能力を持つもの同士の孤独がお互いを惹き寄せ合ったのであろうが、この美耶子との出会いがあってこそ、春海は現世に戻ることができたのは間違いない。
また、春海が異界を脱出し現世に戻ることができた理由として、屍人に一度も触れず(春海は屍人に触れるだけでゲームオーバーになるのはそのためである)、異界にいる時間のほとんどを屋内で過ごしたため、赤い水の影響をほとんど受けていないことも挙げられる。
春海の生還という結果は、さまざまな偶然とさまざまな人の行動によって奇跡的な確率で生みだされたシナリオの一つなのである。
そんな春海であるが、いまだに晴美や晴海、春美などと名前を間違えられる。また名字も「しほうだ」と間違われ、ひどい時は「しほうでん」と読まれてしまう。
モデルと声を担当したのは小南千明。
名前の元ネタは、ドラマ『チャコちゃん』シリーズで、初代チャコちゃん役を演じた四方晴美。
関連高遠玲子名越英治神代美耶子星を見る会
四方田春夫四方田秀美桃子叔母さんビーズ人形
小南千明

四方田 秀美(よもだ・ひでみ)
四方田春海の母親。
1975(昭和77)年3月3日の「三隅日報」朝刊によれば、県道333号で、夫の春夫が運転していた車に落雷が直撃し炎上。助手席に乗っていた秀美は春夫とともに死亡した。
関連四方田春海四方田春夫

黄泉戸喫(よもつへぐい)
黄泉の国の竈で煮炊きされた食べ物を一口でも食べること。またはただ単に死の国の食べ物を口にすること。黄泉戸喫をしたものは現世には二度と帰れないとされる。これは日本神話に限ったものではなく、ギリシアのペルセフォネの神話などにも黄泉戸喫の概念は見られ、神話以外にも黄泉戸喫を題材にした物語などが多く存在する。他の国のものを食べるということは、その国の人間になることであるという考えから、黄泉戸喫の概念が生まれたのであろう。
赤い水は堕辰子の血であり、つまりは"実"である。赤い水を飲むということはこの"実"を食べるということになり、黄泉戸喫となって現世には戻れなくなる。竹内多聞が「黄泉戸喫ぐらいは知っているだろう」と言って、赤い水を飲もうとした安野の行動を止めたのはこのためである。なお、同じ"実"である神代の血によって異界から脱出できなくなるかは定かではない。
ただ吉川菜美子は赤い水を飲んでいるにもかかわらず現世に舞い戻ってきている。しかしこれは例外中の例外であろう。
関連「黄泉の国」赤い水
竹内多聞安野依子吉川菜美子



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